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関東学院六浦小学校長就任式を執り行いました。

学校法人関東学院では、関東学院六浦小学校の松田和憲校長(事務取扱)の任期満了により、2022年1月20日の理事会で黒畑勝男氏を新校長として選任しました。これにともない、4月1日に関東学院六浦中学校・高等学校の礼拝堂で校長就任式を執り行いました。 なお、任期は2026年3月31日までの4年間です。

新校長就任挨拶

関東学院六浦小学校、校長職を拝命することとなりました。2014年に関東学院へ入職、六浦中・高校長の就任の際、イエス・キリストによって結ばれた内村鑑三先生から坂田祐初代院長への繋がりの中への導きと思いましたが、今日は全く想像もしなかった日であらためて身の引き締まる思いです。
本日は、教職の中での最後の決意として3点を申し上げます。社会の変化と教育にいま求められることについて、六浦中・高と六浦小学校に求められている課題について、そして教職員の私学人としての心得について、述べさせていただきます。

1つ目、「社会の変化と教育にいま求められること」について所信を述べさせて頂きます。
時代はかつての経験にないほど大きく変わっていきます。まずは何よりも地球全体でのグローバル化の進行です。社会インフラやシステムのフラット化、あらゆる分野での人流とそれによる多様性の浸透です。一方日本社会においては、世界に類を見ない少子高齢化の加速。人口減少が何よりも大きな変化の要素です。そしてSociety5.0の未来が徐々に見えてきました。経済規模、消費傾向、物流、サービス、職業や仕事の生滅と発生と、生活様式や風習までも大きく変化します。したがって、社会の変化を見据えて、日本の初等・中等の教育のあり方も捉え直さなければなりません。
新学習指導要領の導入にあたっての文部科学大臣の発信があります。「生徒たちは『非連続的』と言えるほど、急激に変化する社会に羽ばたいていく。多様化する中にあって、その能力・適性、興味・関心等に応じた学びを通じて、多様な他者と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となっていくために必要な資質・能力を身につけることが極めて重要だ」。これは、変容する社会に対応する教育方法の改善を強く求めるものです。新学習指導要領の中で現れる「主体的」で「対話的」な学びとは、従来の学習観への根底からの変革を訴えるものなのです。

しかし、私立学校はそうした文科省の発信を待つのではなく、公立と明確に違う先見性の実践を、先見的に主体的に進めるべきです。新学習指導要領を社会の変容と照らさず、要領の指示だけを受動的に受け止めてはいけないのです。押し寄せる変化を意識し、未来を見つめて主体的に変革に取り組むべきでしょう。主体的とは英語ではindependentが相当します。従属せず、依存せず、支配されず、指揮命令下におかれない状態を意味します。社会の変化に対応する人材を育成する教育とは難しい課題ですが、真剣にindependentに取り組むことが私学の大きな使命でしょう。
1年後の変化よりも10、20年後の変化が異次元化するような大きな変化だ、と大きく踏み込んで考えるべきです。パソコンとスマホが現れたのはおおよそ20年前。その時人々はバーチャル空間が実装化された今日を積極的に想像したでしょうか。e-commerceには否定的な意見も多かった。そのことを理解する大人なら、20年後に活躍する世代がその20年前となるこの時代に身につけておくべき力について考え、未来を見据えた教育にindependentな姿勢で思い切って取り組むべきなのです。

これまでのように、過去の知識や技能を単に詰め込むことを「教育」と捉えているのでは不十分です。知識や技能を定形的に習得し、その量と正確さと処理の速さを鍛えることが「学び方」とする学習観からの脱却が必要です。無論、基礎基本の知識は大切な生きる力です。全く否定しません。しかし、広い知識や情報が分別でき、それらを基にして新しく遭遇する知識や事象に立ち向かう。指示を待つのではなく、新しい情報をこれまでの知と比較分析して新たな知として再構成する。この構成的な学び方に習熟することが、今日の日本の教育にとって大きな課題なのです。いわゆる構成主義的な学び方を児童・生徒に一つでも多く経験させる。これが初等・中等教育における今の使命であると考えます。
六浦中・高ではこの8年間、学校のICT化を強力に推進してきました。一貫して主張してきたことは、OECD諸国の中で学校のICT化が一番遅れている日本、ICT活用頻度が群を抜いて低い日本、その原因は教育予算ではない、社会インフラでもない、技術の問題では全くない。そうではなく、学習についての考え方そのものが問題であると論じてきました。従来の授業観では、授業は「チョーク&トーク型」、一斉講義形式で説明して板書する。生徒はその書き取りが中心となる知識注入型。チョーク&トーク型が支配的では、授業におけるICT導入の必然性がありません。世界と比較すれば、日本の学校は多くの分野で構成主義的な学習方法の導入が遅れており、それがICT化を不要としてきたと言えるでしょう。

ICT化とは黒板、教科書、ノートと鉛筆が、パソコンに置き換わるという単純な事ではありません。ICT化とは学び方での変化であり、構成主義的な学習への変革です。児童・生徒の座る空間が教室になり学習道具になる。そこが図書館になり新聞記事のデータベースに入る、資料を即座に参照できる。さらに違う空間にいる児童・生徒とのディスカッションの場ともなり、課題解決に向けての協同の作業場や書き込みボードとなる。ICTの活用は学習観のリセット無くして興らない。逆に言えば、ICTの活用で学習に主体性が生まれ、また個別的には基本的な知識の習得にも最適な学びが生まれるわけです。
2014年の就任式で、私は子どもたちの未来は、大人が経験しなかった変化の先にあり、異次元的な変化に見舞われる児童・生徒の人生は、「未来との衝突」だと言いました。児童・生徒たちが未来と衝突するのなら、学校が、教員が、過去の知恵・知識の詰め込みと習熟だけを教育と思わず、タイムマシーンに乗るくらいの気持ちで、自ら10年後、20年後の将来を夢見て、必要な資質や能力を備えるための新しい学習観による教育を考えるべきでしょう。ICTによる変化もそのきっかけなのです。

2つ目は、「六浦中・高と六浦小学校に求められている課題」についてです。 これは一言、定員の充足に尽きます。しかし、社会の少子化は止まりません。さらにコロナ禍で少子化が加速しています。2021年の出生数は84万3千人でした。6年連続で最低数の更新です。2017年現在での厚生労働省による出生率の中位予想での数値にして7、8年くらいの前倒しのようです。現在の22歳人口は117万8千人、22年後の22歳が84万3千人。71.6%になります。そして、2021年度の出生数の波は数年後に小学校に到来します。横浜の人口動態が大きな関心となりますが、それに動じても仕方なく、課題は教育の魅力をつくり出すことがその全てでしょう。
関東学院は今、大学が躍進します。関内キャンパスの誕生も間もなくです。一方で、六浦小・中・高はこども園とともに、六浦学校ベルトの魅力を増進することが大きな課題です。大きく変わる社会にindependentに生きてゆく、伸びやかな児童・生徒を育てることでの教育力を高らかに示していくべきでしょう。

もっとも、六浦小学校の特色ある教育はもっと評価されるべきです。読書、作文、新聞づくり。そしてその伝統の上に始められた4年目を迎えるMMP(六浦モデル・プロジェクト)です。MMPの三つ「パレット」、「ポケット」、「ドア」。いずれも児童の内発的な動機を刺激するプログラムです。第1点目で述べた、主体的な学びのプロセスを提供していると感じます。PR映像からは先生方の努力が伝わってきます。この学び方と学習活動は楽しい学びの提供となり、児童たちには自分の将来への期待感を内面にふつふつと起こさせています。この数年の六浦中・高への六浦小学校からの内部進学者の姿にそのポテンシャルを感じます。闊達な個性を伸長させながら、気づく力、自己啓発力を育てるものです。
MMPは「自己肯定感」を育てます。また、自分の活動が肯定的に認められ、他者や社会のために役だったという「自己有用感」を引き出すことに有効です。それをさらに効果的に高めるためにICTの活用を推進し、主体的な学びと学びの自走力を高めていくべきと思います。

六浦学校ベルトの魅力増進として、六浦小・中・高での共同開発で10年から12年のプログラミング教育をカリキュラムに組み立てることを課題とし、2022年度から検討に入ります。また、これまで相互協力で進めてきた英語教育も合理化を図り、連携・連続をなお深化させます。これら2つ、情報と英語は、大学進学時の基本的なリテラシーとして持たせたい。同時に、20年後の実社会で求められる主体性を存分に発揮するための大きなツールとさせたい。これを教育の大きな特色の一つとして押し出したいと思います。しかし、ここで言う「教育」とは、六浦では「教え育てる」という植え付ける形での教育ではなくeducate です。Education、つまり「e-ducate」で、「外に-引き出す」こと。授業や学習活動は、「主体的な思考力」と「主体的な行動力」を引き出すものでなければなりません。

3つ目として、「教職員の私学人としての心得」についてです。 この場での発言として相応しいかどうかと迷いつつも述べます。授業料を払って私立小学校へ子どもを入学させる「保護者の私立小学校へ通わせる誇り」は、その私立小学校に勤務する「教職員が自ら感じる学校への誇り」以上に高いということです。そして、「保護者の私立小学校へ通わせるプライド」は「教育への期待」と表裏をなし、保護者の抱くその「教育への期待」は、教員が想像する保護者の期待量をはるかに超える量であるということを覚えておくべきでしょう。ですから、保護者の思いに応えない教職員の教育に対する姿勢は、私学人の心得として失格でしょう。教員一人一人が教育力量を高めなければなりません。学校の「経営品質」を高める責任は教職員一人一人が、誰もが持つ、ということをしっかりと心に留めていくよう、教職員一同と邁進したいと考えます。

最後に述べたいことがあります。
科学技術が発展し生活が豊かになり、グローバル化とフラット化が進む一方で、今日ある国々の振る舞いを見ると分裂や対立が鮮明になってきています。それだからこそ、何をどうやって、何のために学ぶのかということを児童や生徒自身が考えることが重要なテーマなのです。学校はこのことを真摯に実践しなければ、学びは悪魔の道具にしかなりません。生きる力として学ぶことが平和を創る人の育成に向かわせることでなければ、学びには意味がないのです。ピースメーキングの必要性に気づくことは教育の使命の中心です。その点でも未来を見据えてICTを適宜に活用し、世界の子どもたちと交流し、自分の学びと学びの視野とを世界と比較し客観化できる態度を育てることが大事です。

「人になれ 奉仕せよ、その土台はイエス・キリスト也」は建学以来、ピースメーキングの基本を謳い続けてきていると思います。明確でかつ深く、そして具体的に教育の使命を表す言葉でしょう。私学経営は厳しい時代に向かいますが、求められる教育の業を考え、実践したいと思います。

以上をもちまして、関東学院六浦小学校、校長就任のご挨拶とかえさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
主に在りて、感謝を申し上げます。

2022年4月1日
黒畑勝男

kurohata

略歴

黒畑勝男(くろはた・かつお)
札幌市出身。北海道立高等学校教諭、立命館慶祥中学校・高等学校教頭、酪農学園とわの森三愛高等学校副校長を経て、2014年4月関東学院六浦中学校・高等学校に校長として着任。2022年4月から関東学院六浦小学校長を兼任する。

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