関東学院 未来ビジョン
関東学院六浦こども園 園長 根津美英子
日本保育学会第71回大会
保育者の質を高めるために
優れた保育の基本は、まず保育者の質にあると考えています。そのため、職員を対象にした保育研究に継続的に力を入れています。日常での学びはもちろん、外部機関との連携を通じて、より客観的な視点を保つよう意識してきました。
具体的には、お茶の水女子大学こども園との共同研究、先駆的な保育を実施している他園の見学などを行っています。お茶の水女子大学こども園との共同研究では、「発達の連続性に根ざした保育の在り方についての検討」をテーマに、保育学会等で発表を行いました。また、食育活動をテーマに食生活学会および食育学術会議に発表いたしました。お茶の水女子大学こども園とは、実際の保育の現場の相互参観など、人的交流も積極的に行っています。他園の見学としては、今年度は広島にある大学の附属幼稚園などを見学し、有意義な結果を得ました。さらにこういった活動で得た学びについては、本園の教職員が関東学院大学の教育学部で講義を行うなどして、学院全体へのフィードバックも行っています。
また園庭の豊かな自然環境をより活かすために、職員に対して「木育インストラクター」や「保育ナチュラリスト」の資格を取得するように促す取り組みも行っています。子どもにとって、木や自然は人肌の次に心地よいものです。子どもたちがより楽しく自然に親しめるような環境が整いつつあります。
「園庭は第二の保育室」の思いを大切に
子どもたちの身体や心が伸び伸びと育つために、園庭の存在はとても大切なものです。本園では、かねてから、築山やビオトープ、木材や丸太を使用した手作り遊具の導入など、自然環境と外遊びを重視した園庭づくりを進めてきました。職員や専門家だけではなく、「お父さんの会」が園庭づくりに大きな役割を果たしているのも本園の特長です。最初から既製品のように完成された園庭を子どもたちに差し出すのではなく、子どもに注目しながら、専門家と園、さらにはお父さんたちが協力して園庭を作り続けています。お父さんたちは、自ら汗を流して山や段々砂場、木工のできる小屋などを作ってくださっていて、それによって「子どもの育つ環境を親も周囲の大人として一緒に考えるよい機会になっている」や「子どもとかかわる機会が増えた、絆が深まった」という反響の声もいただいています。現在は、お父さんの会との協働事業として、園庭改造やワークショップを月1回のペースで実施しています。さらには職員とお父さん有志による、全国の先進的な園や園庭への視察も行っており、その結果を園庭づくりに積極的に反映させています。
子どもたちは、園庭に設けられた木や丸太の遊具を通じて日々チャレンジを続けています。ときに泣きながら、しかし最後まで一本橋を渡りきる子、次の一本橋に移れなくてこわくなって立ち止まってしまった仲間を、せかさずじっと見守る子ども達…。子どもたちは、大人が思うよりもはるかに大きな力を秘めています。
園庭の一本橋
感性を育む「アート活動」のさらなる充実
アトリエでのアート活動
本園では、こども園の前身の幼稚園時代から関東学院大学のアートの先生を招聘するなど、アートへの取り組みを活発に行っています。私たちは、子どもたちが自らの感性を活かし、表現する活動全般を広く“アート“と捉え、一人ひとりの個性を大切に育んできました。
2018年度は、絵具や段ボールを使ったダイナミックなアートと、じっくり取り組む静かなアートと、それぞれの活動にふさわしいアトリエを2か所に設けるなど、子どもたちがアート活動に夢中になれる環境を整備しました。現在はアートの専門家として、関東学院大学教育学部教授とお茶の水女子大学付属小学校でアートの先生をされていた方に週2回ほど来ていただいています。また、横浜美術館で催されたアート研修には2名、東京都美術館のアートプロジェクト『TURN』には園児25名が参加しアート活動を行いました。職員研修としては、世界で最も注目される、イタリアのレッジョエミリア市の乳幼児教育に関するシンポジウムに4名の職員が参加し、同市ローリス・マラグッツィ国際センターで行われた幼児教育研修に3名の職員が参加しました。今後は、ライトテーブルやカラーLEDを使用した道具による「光の遊び」といわれるプログラムや、東京芸術大学とのコラボによる「花神輿」イベントなどを行い、子どもたちがのびのびと感性を発揮できる場をさらに充実していきます。
キリスト教保育をベースに「選ばれるこども園」をめざして
こうした本園の取り組みは、国内をはじめ海外の乳幼児施設で本園を視察したいと訪問者が増えてきていることから、本園の活動が広く認知されてきていると考え、今後もさらに展開していけたらと思います。
2019年度以降は、まずは地域に対する貢献度をさらに高めていく予定です。本園には、金沢区で初めて横浜市公認となった、つどいの広場事業「親と子のひろばおりーぶ」がありますが、こういった施設を活用しながら、地域の子育て拠点としての役割も担っていきたいと考えています。さらには、保護者を対象に講座を行って非常に好評をいただいたアメリカやカナダの子育て支援プログラムなども、地域の親御さんの子育てサポートに活かしていければと思います。
またもう1点力を入れていきたいことは、保護者・職員の両者に、『キリスト教に基づいた保育の実践』への理解を深めてもらうことです。「子どもたち一人一人は神様から与えられたかけがえのない存在である」というのがキリスト教保育の根幹です。子どもたちにとって、あるがままの姿で愛された、受けとめられたという実感が生きる力につながっていきます。職員に対しては、ノンコンタクトタイム(保育外の時間)などを活用して、キリスト教への理解をより深めてもらいたいと考えています。
こども園は、乳幼児期にしか培えない大事な力を育てる場です。六浦こども園は、これからも保育内容のさらなる向上などを通じて、より地域から選ばれるこども園をめざしていきます。