関東学院学報 No.45
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Masanobu Yuzawa4 KANTO GAKUIN NEWS No.45新たなフィールドへ/特別インタビュー 昨今、自然や地球環境との共生、少子・高齢化に伴うコミュニティの再生など、私たちを取り巻く社会状況は大きく変わりました。同様に、建築が抱える状況も時代とともに変化を遂げ、現在は、建設するということをどう捉えればいいのかを考えなければいけない過渡期でもあります。これまでは建物は古くなったら毀し新しく建物を建て替える時代でしたが、現在ではモノを大事にしていかに既存の建物を活用するのかという方向へと変わってきています。ですから、社会的資産としての建築の維持や建築と環境と社会と人間の在り方について、もう一度根本から考え直すことが問われているのです。 そこで、従来の工学とデザインという二つの軸に加えて、新たに「環境」と持続する「時間」という二つの視点を取り入れることで、「建築・環境学」という学問フレームを提唱し、建築・環境学部を設立することにしました。 この学部では、建築を創ることに加えて、自然との共生や社会の持続的な発展の視点を学び、現代社会に必要とされる建築を考えます。そして、これらの学びを具体化するために5つのコースを用意しています。建築・環境学という魅力的で広大なフィールドのどのポジションで社会に貢献したいのかという視点からコース選択を見極めてもらいます。1・2年次でしっかりと基礎を学び、3年次にコース選択となりますが、どのコースを履修しても目指すところは同じ「建築・環境学」ですので、4年次にコースの変更も可能な柔軟なカリキュラム体制をとっています。 また、5つのコースの共通の特長として「実践重視」と「少人数制」があげられます。「少人数制」では3年次から「スタジオ」という形式を採用します。10名程度の学生によるプレゼンテーション重視の学びです。毎回の授業で学生は発表を行い、自分の提案をどう伝えて説得すればいいか、何が足りないのかを客観的に知り、学生同士の対話を通じてコミュニケーション能力も養います。1・2年次での「建築設計製図」などの重要な授業でも少人数制を採用しますので、学生と教員が一緒に成長し、「実践重視」の幅広い技術と知識を修得することが可能です。 建築は、工学的な側面が強いのは事実ですが、文系の素養も必要な分野です。高校時代に文系だった学生でも安心して学べるように、1年次には「文系のための建築数学・物理」という授業で建築に必要とされる理系の知識を効率的に学習できるカリキュラムを整えています。 建築は、人と社会をつなぎ前進させる力になります。新しく建築を捉え直すことに意欲のある学生が集うことを期待しています。College of Architecture and Environmental DesignKanto Gakuin University has proposed a new disciplinary frame for “architecture and environmental study,” and beginning in April 2013, the College of Architecture Environmental Design will be established.The College of Architecture and Environmental Design is designed in such a way that students can learn about the creation of architecture as well as harmonious relationships with the natural environment and sustainable development of society so that they can think about architectures that is needed in today’s society. Its four-year diverse curriculum provides students with opportunities to rethink how architecture itself should be and design architecture to create the future. 建築とは、形や機能のデザインにとどまらず、工学的・人文学的・社会学的・芸術的といったさまざまなアプローチ方法を使い、これからの社会を洞察した「思想」を形にするものです。このような思考と技術を発展させ、建築と環境と人間の在り方を問い直し、従来の建築に新しい視点「環境と時間」を導入して、新たに「建築・環境学」というひとつの学問フレームを提唱することとしました。その学びの場として2013年4月、「建築・環境学部」が誕生します。建築・環境学の新しい地平を開きます総合的な営みである建築そのものの在り方を今こそ問い直して、これからの時代を創る建築を志しますProfile1975年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了1979年 関東学院大学工学部専任講師着任1993年 関東学院大学工学部教授設計作品で日本建築学会賞をはじめ、受賞多数建築・環境学部長就任予定湯澤正信建築・環境学部2013年4月開設

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