関東学院学報 No.43
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KANTO GAKUIN NEWS No.43 7背中を押されてのこと。もともとはボランティアには全く興味がなく、みんなのように自発的ではなかった。でもいくつか経験するうちに、大学のプロジェクトにも参加しようという気持ちが自然に生まれていました。松田 学生の参加希望者が予想できず実は心配でした。ところが予想以上の応募がありましたね。俵 ええ、今回、募集人員を大きく上回る学生187名、教職員も多数応募いただきました。心より感謝しております。残念ながら、諸般の事情によりかなり人数を絞らざるを得ませんでしたが、参加した者は、一人ひとりが行かれなかった多くの方々の思いを胸に抱きながら、関東学院大学の代表として活動してきました。まるで映画のよう現実感が乏しい南三陸町に茫然松田 最初に南三陸町に降り立ち、防災対策庁舎の前で祈りを捧げましたが、あの風景を見て何を感じましたか。近藤 あまりにも何もなさ過ぎて、現実感が乏しいというか…。庭山 日本じゃないみたいでしたよね。海からずっと離れた内陸の方まで被害が及んでいるのを見て、規模の大きさに言葉を失いました。宮内 私は銚子での体験と重なり、はるかに大きな被害を目の当たりにして、胸が苦しくなりました。徳田 僕なんかあまりの荒廃にまるで映画みたいで、ポカンとしちゃって、その日の出来事を書く報告書にも何を書いていいのか分からなかった…。皆川 そこに町があったというのが想像できないのですよね。でも避難所での活動が始まって「そこに家があった」「あそこまで水が来た」などという話を聞くと、ああ、本当にここに大事な生活があったのだということが分かる。何と答えればいいか分かりませんでした。近藤 「家族を亡くした」と話されると、本当にどう答えていいか分からない。笑顔でいらしても多くの死と隣り合わせだったのですよね。宮内 私は仮設住宅の一軒ずつに、人数分のタオルを配る作業の際「子どもさんは何人いらっしゃいますか」と聞いてしまったのです。その方が言葉を濁されたので、お子さんを亡くされたと分かり、言葉に気を付けるべきだとすごく反省しました。徳田 僕らの時はまだ関東学院のチームが浸透せず「短い期間じゃ何もできないだろう」というようなムードも少しはあったかと思います。庭山 私達も第1期で、何をするにも手探り状態でした。避難所から仮設住宅への引っ越しの時期で、住民の方々も落ち着かず、他の期のチームに比べたら接点はずっと少なかったと思います。松田 1期は手探りだし、2期も仮設という新しい環境の中で認知度が低く、現地に溶け込むのが中々大変だったね。しかし、困難な中でみんなが真摯に頑張ったことが、現地の人々の心にも届いたのは確かだろう。全てに参加した鈴木さんは、その変化を目の当たりにしていますね。鈴木 ええ、期を追うごとに関東学院が浸透し、4期5期は大歓迎ムードでしたよね。揃いの紺色のTシャツや帽子が目印で、すぐに子どもが集まってきた。2期から始めたお茶っこ(茶話会)も評判が良く、出張サービスにまで発展し、喜んでいただけたと思います。近藤 知り合いのいないご夫婦を出張お茶っこにお呼びしたら、すぐに他の方々と溶け込んでいかれて、お茶っこが役立っていると感じてすごく嬉しかったですね。皆川 本当に1期から4期までのチームの様々な活動のお蔭で、私達5期は一番おいしい所をいただいちゃった感じです。全部の仕事が終わってお別れのときも、泣きながら握手して下さる方がたくさんいて…。庭山 羨ましい感じもしますが、私達にも喜びや学びがありました。瓦礫撤去の仲間から、アルバムを見つけた時の気持ちの揺れを聞いた夜のミーティングも、砂利を敷き詰めた仮設の自転車置き場で子ども達と宝探しをして遊んだことも、私にとっては忘れ難い出来事です。松田和憲教授大学宗教主任 工学部教授(キリスト教学)関東学院野庭幼稚園園長毎週1,000人以上と接する仕事の根本は「人間が愛おしい」という気持ちだと自己分析。震災プロジェクトのいわば生みの親。忙しい日々をスーパー銭湯でのリフレッシュで乗り越えている。俵 秀雄氏学生支援室室長一人でも多くの学生に「この大学に来てよかった」と思ってもらいたいと学生支援に尽力。震災プロジェクトでは事前準備など、八面六臂の活躍。好きな言葉は「希望は失望に終わらない」。楽しみはテニス。鈴木康夫氏学生支援室金沢文庫キャンパス職員学生支援室の仕事は2年目。第1期から第5期まで全てに参加し、現地と学生を結ぶ要の役目を果たした。プロジェクト終了後も個人的に南三陸町に足を運んでいる。「無理せず、焦らず」がモットー。水泳は指導者の実力。第1期(8月2日〜8月6日) 庭山夕貴さん人間環境学部人間環境デザイン学科4年絵をかくのが好き。今は毎日一点スケッチすることを自らに課している。プロジェクト地でも詳細な記録をスケッチ入りで残した。第2期(8月8日〜8月12日) 徳田圭亮さん法学部法学科3年中高は剣道部。大学では運動をオールラウンドに楽しむサークルに所属し、社交性が広がったのが嬉しい。第3期(8月23日〜8月27日) 宮内菜帆さん経済学部経済学科1年好きな言葉は「努力」。ボランティアから戻り、大学の聴覚障害者支援組織「ノートテイク」に参加。最近読書の面白さにも目覚めた。第4期(8月29日〜9月2日) 近藤なつみさん文学部英語英米文学科3年最近料理が好きになってきた。オムライスが得意。動物好きだが、一人暮らしで飼えないので、代わりにベランダ菜園を楽しんでいる。第5期(9月5日〜9月9日) 皆川未希さん経済学部経営学科1年好きな言葉は「一生懸命」。本プロジェクトの後も個人的にボランティアに参加。学生支援室による「学生メンター」の一員にもなり、学生相互サポートのボランティアスタッフとして活動している。出席者プロフィール 近藤なつみさん 文学部英語英米文学科3年宮内菜帆さん 経済学部経済学科1年鈴木康夫氏 学生支援室金沢文庫キャンパス

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