関東学院学報 No.43
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KANTO GAKUIN NEWS No.43 15関東学院各校NEWS関東学院各校NEWS学部の開講科目「総合コースⅣ」では今年度より客員准教授に就任した寺岡呼人氏による講義が行われました。横浜出身のフォークソングデュオ『ゆず』をプロデュースしたことで知られる寺岡氏は、松任谷由実氏、奥田民生氏、桜井和寿氏ら多くの歌手とコラボレーションするなど、現代の音楽シーンを代表する音楽プロデューサーです。 講義の目的は「現代音楽産業のありようを考察し、時代と音楽の関わりを探る」こと。音楽がいかに時代の諸相と結びついているかを、作詞家の山田ひろし氏を招いて探っていきました。「誰でも作詞家」をテーマとした全4回の授業。その第3回目をレポートする前に、2回までの授業を簡単に紹介します。●第1回目 「作詞家の話を参考に実際に作詞に挑戦」 この日は楽曲を制作するにあたって、先に詞を書き、後から曲をつける「詞先」と、曲が出来た後で詞をつける「曲先」があることを学びました。寺岡・山田両氏が製作に携わ詞になっている作品にも注目。「君が笑うと、僕が嬉しくなること」を理系的に表現していて面白いと評価していました。 短い詞の中で起承転結をきれいにまとめた作品や序盤は歌詞の意味が不明でも、曲が進むにつれて徐々に種明かしがされ、最後には「そういうことだったのか」と思わせる作品なども取り上げ、学生も自分の作品の思いがけない評価や人の作品の面白さに興味をひかれたようでした。 最後に寺岡氏と山田氏は次のように締めくくりました。 ・ �人の関心をひきつけるために「つかみ」は非常に大切である。 ・ ��歌詞を見て「?」と思っても、曲を付けて歌ってみると、気持ちが良いこともよくある。 ・ �今回の授業で「フラクタル」「共鳴」という言葉が出てきたように、詞にすると、日常生活で使わないような言葉も使えることがあり、面白い。 言葉の持つ不思議な力や曲作りの妙にも気づかされ、何となく詞を書いてみたくなる授業でした。った楽曲の事例の紹介があり、学生は自分の名前や好きな単語を使った作詞に挑戦しました。●第2回目 前回に続き、どのように作詞をするのか、いくつかの事例をもとに説明を受け、学生それぞれが作詞に挑戦しました。 また、新たに「指定された文字数に合うような作詞に挑戦」という課題が出され、優秀な作品については次回以降の授業で両氏が実際に歌って、詞の解説をするとの説明がありました。●第3回目 実際に見学したこの日の授業では、宿題の作詞が発表されました。続いてその詞が曲にのせられ、歌となって教室に流れました。言葉だけの印象と歌となった時の印象があるものは大きく、あるものは微妙に変化し、歌と曲の大切さが理解できます。 山田氏は学生の作品を例にとり、歌詞が「初めて」で始まり、「終わりの」で終わっており、ストーリー性が評価できると講評。さらに、「一瞬一秒」に対して「瞬きの歌」と類語が使われており、バランスも良いとほめられました。 また、工学部の学生らしい、理系的・理論的な歌寺岡呼人客員准教授による講義(工学部開講科目・総合コースⅣ)大学工 本講義を担当するのは工学部の吉原高志教授です。工学部において、演劇、落語、スポーツなど、体験型文化講義を提供し続けている意図は何でしょうか。 「工学部の学生がその学びを生かして社会に出たからと言って、相手にするのは機械や技術だけではありません。様々な業種や多様な人々を相手にすることになる。そうした時に、広い視野や豊かな感受性が大きな力となるはずです」 そう語る吉原先生は、専門のドイツ文学はもとより、多様な文化の造詣が深いだけではなく、確たる信念を持っていらっしゃるようです。「文化芸術や芸能と呼ばれる表現方法に優劣はない」という信念です。歌舞伎は落語より上、クラシックは最上の音楽というような日本人の特に知識層に良く見られる価値観は、素晴らしい表現に触れる機会を狭めてしまうというのです。 敏感な感覚を持つ若いうちに、多様なジャンルの表現に生で接することはその後の人生を豊かにする。そう確信する吉原教授はご自身の広い人脈を利用してユニークな授業を提供し続けています。今回の寺岡呼人氏と山田ひろし氏による講義からも、学生それぞれが何らかの刺激を受け、面白さを発見してほしいと願っています。吉原教授に聞く工学部で文化的授業を行う意味左から山田ひろし氏、吉原高志教授、寺岡呼人客員准教授

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