関東学院学報 No.43
13/24

12 KANTO GAKUIN NEWS No.43善哉先生、小原敬士先生をはじめ素晴らしい先生がひしめいていて、大変魅力でした。それだけに2年で終えるのは難しいとされていました。でも僕は結婚していたので、悠長なことは言っていられません。論文をまとめて無事2年で修了しました。確か、最初の修士課程修了者だったはずです。 その後、文学部の専任講師になり、やがて学生部長に。その間、本学は全国的な学園紛争の渦に巻き込まれていきました。僕も対応に追われて当時は机に向う時間がない程。ようやくその波が収まる頃に留学の話があったのです。大澤 本学の紛争は、よそからの流入が多く、かなり長引き、かつ激しかったようですね。そのお疲れからいわば逃れての留学となりますか。小林 収束を見て、少し休みたくなったのは事実です。ただ、研究助手の頃、ある教授に「文献を調べただけの論文では意味がない。これからはフィールドワークこそが重要」と言われたことがずっと頭に残っていたのです。いつかは英国の港で実地調査をしながら港湾経済を考察したいと思っていましたね。当時、奨学金が十分ではない時代の1年間の留学で20キロ痩せて戻りましたが、刺激的で大変充実していました。大澤 日本から見ると英国は1つの国家ですが、実際は4つの国々から成る王国ですね。イングランドとスコットランドを比較なさることも面白かったのではありませんか。小林 まさしくそうなのです。都市と港が私の研究課題でしたから、横浜との比較も興味が尽きませんでした。留学から本学に戻り、やがて文学部教授となり、20年を経て比較文化学科の開設と同時に学科長就任に至ったのも、この時の学びの経験が役立ったように思います。大澤 先生のご活躍はとても語り尽くせませんが、本学で学生達と接する中で、特に印象深いことは何でしょうか。小林 私はね、柔道部の顧問をしていまして、これは中々強くて、良い思い出がたくさんあります。また、野球部は顧問ではなかったのですが、代理で学生をアメリカのオレゴン州遠征に引率したことも忘れられません。大澤 オレゴン州というと、本学の姉妹校で交換留学を行っているリンフィールド大学がありますが…。小林 まさにそのリンフィールド大学と姉妹校協定を結ぶ調停式に同行したのです。大学では契約を結ぶだけではなく、折角だから何か親善となることを行いたいと考え、野球部を遠征させることになったのです。1976年のことでした。本校の海外留学制度の歴史的一歩となったわけで、非常に感慨深いものがありました。大澤 ここにその当時のアメリカの地元紙の記事がありますが、学生も輝いて見えますし、先生もお若い。小林 あはは。私にも若い頃はあったのですよ。あの頃の学生も元気いっぱいでしたね。授業や部活が終わっても中々帰ろうとしない。今は早く帰る傾向が強いような…。大澤 ええ、アルバイトに忙しいという学生が多く、私ももったいないと感じています。大学も学生も個性を失って、活力も半減したのでしょうか。小林 それはどの大学にも共通した悩みかもしれません。関東学院には関東学院ならではの魅力がいろいろとあります。校訓「人になれ 奉仕せよ」を基本としたミッションスクールとしてのゆるぎなさも、創立以来変わらない私達の姿です。こういう理念を日常的に浸透できるような教育をもう一度考えてみてほしいと願っているのですが。大澤 そうですね。私も文学部のある金沢文庫キャンパスには礼拝堂があってほしいと思っています。また他にもある本学の様々な特長を魅力と捉えて、個性を育み、学内でもアピールしていくべきかもしれません。小林 僕自身は今後もスコットランドへ出かけて、自分の研究に注力したいと考えていますが、母校であり、僕の人生そのものであった関東学院の発展を常に祈っています。大澤 今後ともよろしくお願い致します。本日は誠にありがとうございました。 関東学院大学では現在、海外の6大学と交換留学制度を実施しているが、その先駆けとなったのが、1976年のリンフィールド大学との姉妹校協定である。リンフィールド大学は本学と同じバプテスト系の人文系単科大学。オレゴン州が未開の地であった1849年に創設された歴史の古い大学である。時代を先取りする画期的な姉妹校協定の実現には、同大の教授でかつて関東学院の教鞭をとられたキムボール先生やエリオット先生のご尽力があった。 現在も交換留学制度は大きく変わってはおらず、留学先大学の授業料免除と往復航空券の給付が基本。留学期間は本学の在学期間として見なされ、留学先で修得した単位は本学の履修規程に基づき、単位認定を受けることが出来る。リンフィールド大学との姉妹校協定●小林照夫(こばやしてるお)氏 略歴1941年神奈川県川崎市生まれ1964年�関東学院大学経済学部経済学科卒業一般企業就労を経て1969年関東学院大学大学院修士課程修了関東学院大学文学部専任研究助手1982年関東学院大学文学部教授2004年関東学院大学文学部長就任2011年関東学院大学名誉教授の称号授与今後はスコットランドなどでのフィールドワークを通し、個人的研究に注力したいと考えている。●大澤善信(おおさわよしのぶ)氏 略歴1953年福井県生まれ1978年中央大学法学部卒業1986年中央大学大学院文学研究科後期課程単位取得満期退学1989年金沢大学教育学部・同研究科助教授2000年金沢大学教育学部教授2004年関東学院大学文学部教授2011年関東学院大学副学長就任楽しみは自分で車を運転し、各地の灯台を見に行くことAppreciation for Our Alma Mater after Years of Experience as a Student and as a ProfessorProf. Teruo Kobayashi, a retired emeritus professor of the College of Humanities, visited the university to participate in an interview with Prof. Yoshinobu Ohsawa, Vice President and a professor of the College of Humanities. As the two professors were both from the College of Humanities, the interview was held in a friendly manner. Prof. Kobayashi talked about a wide range of topics, including his memorable performance in a Shakespeare play in English, experience as a corporate employee, a loss of 20 kg in weight while studying in England for one year, and episodes during the period when he was an advisor to the baseball club. At the end of the interview, he expressed his determination to be engaged in his research in Scotland in the coming years and concluded by hoping for the development of Kanto Gakuin.

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です