関東学院学報 No.42
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6 KANTO GAKUIN NEWS No.42調査を通して学生が得るものは工学部社会環境システム学科規矩大義教授(写真中央) 私たちの研究室では、学外で行う調査のほとんどが、共同研究かクライアントがいる調査です。学生にとっては、決められた日程の中で、最大限の結果を得るには自分たちが今何をしなければならないかを考えるいい機会だと考えています。また、大学院生は学生ではなく、研究上のパートナーです。だから、時には厳しい要求もしますし、でも喜びも分かち合いたいと思っています。そして、大人、社会、学外の機関と共同で実験や調査をすることは、今後、必ず彼らの態度や生活に結び付くと期待しています。 また、今回は、悲惨な被災地のなかで、感情を抑えて行動することを要求しましたが、彼らはそれに応えてくれました。一方で、そのような悲惨な状況のなかでも、被災された皆さんが声をかけてくださったり、暖かい目で調査の様子を見てくださったことは、彼らの心に大きく、深く響いたのではないかと思います。また、土木工学を学ぶということが、いかに大切か、そして目立たないけど、国民のためにどれほど役に立っているかということを実感でき、自分たちの学問分野に誇りが持てたのではないかと思います。宮城県牡鹿郡女川町女川街道町立病院マリンパル女川調査エリアReport of the Ground Survey of Onagawa-choA joint research group of the Ground Disaster Prevention Engineering Laboratory (Department of Civil and Environmental Engineering, Kanto Gakuin University’s College of Engineering) and the Port and Airport Research Institute conducted a ground survey in Onagawa-cho, Oshika-gun, Miyagi-ken, which was damaged by the Great East Japan Earthquake. Since it was highly likely that soil liquification occurred in an area where reinforced concrete buildings stood, the research group conducted a study to elucidate the mechanisms of liquification. A team of NHK reporters filmed the survey process. The ground survey, which was conducted on June 20 and 21, consisted of a sounding survey and a surface wave survey. In addition to the faculty member, six graduate students and researchers from the Port and Airport Research Institute also participated in the survey. The survey results showed that the ground along the coastline of Onagawa is extremely fragile and it is possible that soil liquification may occur at any time.きるか)と地震時の土の強度を調べることです。地盤の固さを直接・間接的に調べる2つの方法を用いることによって、より正確な分析を行うことができました。 今回の調査の結果、転倒したビルの周辺を含め、女川町の海岸線の地盤は極めて軟弱で、液状化がいつ起きても不思議ではない地盤であることがわかりました。この調査の様子は7月10日のNHKスペシャルで放映され、東日本大震災における液状化被害は世界最大で、この新事実をもとに「液状化」に備えるために何が必要かという問題提起が大きな反響を呼びました。同時に本学の大学院生たちの実践的な研究活動が社会に認知され、今後の対策技術の開発に期待が寄せられています。調査活動を経験して大学院工学研究科土木工学専攻博士前期課程2年 松本愛貴さん(上の写真右端) テレビや雑誌などで津波の被害の様子を見てはいましたが、実際に被災地に行ってその規模の大きさや無残さを目の当たりにすると言葉が出ませんでした。現場は足場も悪く埃が舞い、日差しや魚の腐敗臭がきつかったですが、先生や仲間と協力しいつも以上に真剣に作業に取り組むなかで、研究室の絆も深められ、これから社会に出て自分たちが仕事をする意義も再確認することができました。本学所有のサウンディング試験機を用いてのがれきの中でのサウ

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