関東学院学報 No.42
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KANTO GAKUIN NEWS No.42 15関東学院各校NEWS5年生 研修旅行六浦中学校・高等学校教諭 中島 聖月10日(火)午前8時30分。5年生187名が、羽田空港から九州方面の研修旅行へと旅立ちました。1日目は全員で原爆資料館において被爆された方の講演を聞いた後に資料館と平和公園内を見学し、2日目は終日長崎市内班別自主研修を行いました。そして3日目からは、佐世保のハウステンボスと隠れキリシタンの信仰の歴史を物語る場所が数多く点在する外海地区や平戸市を巡るAコース、堂崎教会など多くのカトリック教会や日本の渚100選の一つでもある高浜ビーチを有する福江島を訪れるBコース、雲仙災害記念館等で自然の脅威を学ぶとともに田植え体験やファームステイを通して農業に触れるCコースの3コースに分かれて研修を行いました。 この研修旅行を終えて、二種類の文章を生徒た5[Mutsuura Junior and Senior High Schools]High School Juniors (11th Grade) Study TourOn Tuesday, May 10 at 8:30 a.m., high school juniors left for Kyushu on their study tour. On the first day, following a lecture at the Nagasaki Atomic Bomb Museum, they took a tour in the museum and visited the Peace Park. On the second day, students were divided into groups, and each group conducted its own study in Nagasaki City. On the third day, the students participated in one of the following tours: Course A to visit Sotome area and Hirado City, Course B to visit Fukue-jima, and Course C to experience farming activities, such as rice planting and a stay at a farm. The students experienced significant growth through their experience during this study tour. It is hoped that they will make full use of what they have learned and experienced during the study tour in their school life and in their future.ちに書いてもらいました。一つは「平和講演を聞いた感想」です。一人の生徒の文章を紹介します。 私は最初この講演をあまり楽しみに思っていませんでした。なぜなら実際に被爆したという経験談は、生々しくて恐ろしい話だと思っていたからです。その反面、実際に被爆した人の貴重な体験談を聞いてみたいという思いもありました。 和田さんの話が始まり、私は耳が離せなくなりました。まず戦争が激化していくにつれ学校へ行くことができなくなり、学生なのに強制的に労働させられるようになったという事実が衝撃的でした。普通に学校で勉強することができている自分の環境がいかに恵まれていて素晴らしいものなのか、ということを実感せずにはいられませんでした。また、重傷を負ってもきちんとした治療をすることができていなかった、ということも印象的でした。特に雑巾で傷口を拭っていたという事実には特に驚かされました。和田さんの友人で、目がぶら下がり、服と肌の区別がつかないほどの重傷を負った田中さんの放った「僕はなにもしてない」という言葉が、戦争の理不尽さを物語っていると思いました。何の罪もない一般人に無差別に攻撃を続けていた戦争を、改めて恐ろしいと思いました。 和田さんは講演の後に、「アメリカのやったことを許すことが出来ない。」と語っていました。「アメリカが率先して核兵器をなくすべきではないのか。」とも話していました。アメリカは〝戦争を早く終わらせるため〞という大義名分で原爆を投下しましたが、広島・長崎を核兵器の威力を計る実験台にしたという側面もあります。そんなことのために何人もの罪のない民間人が惨殺されたことについて、日本は後世に伝えていくべきなのだと思います。唯一の被爆国として、日本は二度と悲劇を繰り返さないためにも、国際社会の中で積極的に平和活動につとめていくべきなのだと私は思います。 貴重な体験談を聞かせて頂き、感謝しています。 (姫野 沙月) このように、貴重なお話の中から多くのことを生徒たちは感じ取ったようです。また、この講演を聞いた日は、東日本大震災から2ヶ月を迎える前日でした。原子爆弾投下という人災と、大地震という天災という差はありますが、すべてが破壊されてしまうという点において重ね合わせて考えた生徒も多くいました。 もう一つの文章は「あなたにとってこの研修旅行はどのようなものであったか」というものです。生徒の文章の中に多く出てきたことばの一つが「成長」です。一年生の天城オリエンテーション、二年生の軽井沢自然教室、三年生の京都・奈良研修旅行と続き、これが生徒にとって関東学院六浦における最後の宿泊学習となりました。宿泊学習を通して、そして普段の生活を通して、「今までは自分が基準であったのが、広い視野を持って物事を判断できるようになった」「普段の生活で他人に頼りすぎていたことに気づくことができた」「場に応じて自分の欲求を抑えて行動することができるようになった」「困っている友人を助けてあげることができた」と様々な「成長」が生徒の作文には書かれていました。 また、私自身も生徒と共に楽しみ、学ぶことや気づくことの多かった研修旅行でした。その中でもあまり周囲には気づかれていない出来事ですが、私の心の中に強く残った出来事があります。そのことに最初に気づいたのは、2泊した長崎のホテルを離れる3日目の朝でした。部屋の確認に行くと、ホテルの方に手紙を書いて枕元に置いている生徒たちがいました。「手紙を書いたの?」と聞くと「単に暇だったからですよ。」と笑いながら答えていましたが、その手紙は宿泊先が変わっても4日目の朝、5日目の朝と続きました。生徒にとっては何気ない行動だったのかもしれませんが、「1泊でしたが、お世話になりました。おかげさまで研修旅行の最終日を楽しく過ごせました。また研修旅行以外でもぜひ訪れたいです。」などと書かれた手紙に込められた思いは、きっとホテルや旅館の方たちにも届いたことでしょう。周囲の人々や環境に感謝して過ごすことが大切だということに改めて気づかされるとともに、その気持ちが生徒の中に確実に育まれていることにも気づいた出来事でした。 この研修旅行を通して、生徒たちは一回りも二回りも成長したと見受けられます。得たものをこれからの学校生活、そしてその先へと活かすことを願っています。

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